Mon journal 甘くて優しい日々のこと

キッチンに立って思うこと。


このお仕事をし始めてからブログではあまり長文で自分の主張を書かないように。
と、なんとなく心がけていました。

私は食べることが好きで、食べるものを作る作業が好き。
その楽しさを、ぱっと写真と文で、感覚で伝えられるブログにしたいなと思ったから。
なかなか難しいのですけれど。

本日はちょっと長文で。
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写真は大学の頃に両親に連れて行ってもらって感激した三田のコートドールの
「赤ピーマンのムース」
を自分で作ってみたもの。

じっくり火を通して柔らかくした赤ピーマンに生クリームとバターをあわせるだけ。
付け合わせは水分を飛ばしたトマト。
食材は少なく、レシピは単純。

削ぎ落せるものは全てそぎ落とした、シンプルな、しかし見事な組み合わせの極上の一品です。
ただし時間はかかる。材料の状態を見極めるには技術もいる。

シェフの斉須さんの本に
「急いだ作った料理は急いだ味にしかならない」
という言葉があり、それはいつも私がキッチンに立つとき、頭をよぎります。
かけられる「時間」と「お金」、使える「技術」。

家庭で作るもののレシピはレストランとは違うバランスになる。
いつもこの3つと「美味しさ」を天秤にかけて考えます。

毎日のご飯とお菓子作りでも、ちょっと変わってきます。

お菓子は普段作らないからこそ、どうせ作るなら、家で自分が作るからこその
「おいしさ」も欲しい。

ハードル(普段買わない食材を買って使ってみる)はときとして、
楽しみに変わることもあるから
甘いものはハードルを加減しつつ、
でも気軽に手軽にと心がけて。

私のレシピでは、これはと思う材料や道具は記載するようお願いしています。
代用品もご紹介するけれど、余裕があるなら、ぜひ。と記載しているものは、やはり
使うと味が明らかに上がるものなのです。
でも、ほんとにほんとに、これはって思うものだけにしています。
あってもなくてもほんのちょっとしか変わらないものは、そぎ落とします。

製菓材料店でしか買えないものがたくさんあると
それだけでやる気がなくなってしまいますものね。

でもね、腕をあげるのは一朝一夕ではなかなか難しいけれど、
材料や道具を変えるだけで、ぽんっとワンランク美味しいものができたりする。
そんな発見は楽しいし、嬉しいものではないかなと思うのです。

一気に味があがる隠し味の材料は実は家庭にあるごく身近なもの…
だったりすることもあります。
見つけた時は「…私、天才じゃないの?」と気持が上がります。(笑)
こういった発見は雑誌のお仕事をしているときが多いかな。
縛りが多い中の、苦肉の策が功を奏すということがなんと多いことか。
お仕事で成長させてもらっているといつも思います。


パリの職業学校でCAPをとった後、しばらくフランスでも、
それから帰国後は日本でも、レストランとパティスリーで働いていたけれど
私は、パティスリーよりは断然レストランな人間でした。

パティスリーに求められる細かい技術の単純作業、
(とりわけおいしさというより見た目のための作業)がまったくあわなくて
一瞬がおいしいデザートを土壇場で作る方が楽しかった。
というか、ただ単に賄いがおいしくて幸せだっただけなのかもしれませんが(笑)
(秋になるとキノコの掃除とかも頼まれたけど、
賄いに回るかもなのか思うと、ほくそ笑みながらやったものです。
そんなときは、単純作業でも平気だったんですよね…。)

子供の頃から、いつもおいしさと楽しさだけを求めて生き、
NYでもニースでもパリでも食べ続け、肥えるだけ肥えて
技術はまったく上がらなかった。
でもそんな経験や性格(楽しいこと、美味しいことが好き、でもできれば楽したい。)が
今の仕事だと活かされてるんだと思っています。

今のお仕事で一番楽しいのは、子供の頃から好きだった「本」の製作。
でも私にとって「本」というのはいつまでたっても大きな存在。
買ったらなぜか捨てれないものなんです。

そんな本を自分が作る。
それを誰かが手にとって家に連れて帰ってくれる。
家の本棚に並べられ、そこからときどき何かを作ってくれると思うとドキドキ。
嬉しいけれど緊張が走ります。

お会いしたことのない方からの「本買いました。」というメールは
嬉しい半面、気に入ってもらえたかしら。うまく作ってもらえるかしら…。と、
その人の家まで押しかけて、確認しながら一緒に作りたいような気持になります。
毎回思います。

だから、単行本作りはとても楽しくて魅力的だけれど
ものすごく大きなこと。
その場限りの試作のよせあつめではなくて、
いつも自分が家で作っているレシピ。
お菓子教室で好評だったレシピ。
雑誌で人気が高かったレシピ。

友達が家にきたら絶対食べさせてあげたいって思ってる
レシピだけをもう一度紐解いて、
なんで好きなのか、なんで人気なのか考えながら
とにかく絶対おいしいから作ってみて!って言い切れるものだけを。

自分のペースで出していけたらいいなと思っています。

そして、買ってくれた方の家にずっと置いてもらえますように…と願っています。
| よしなしごと | 13:22 | comments(18) | trackbacks(0) |